就業規則は、職場のルールで、これを先に示しておくと、従業員は、職場における自分のふるまいをイメージすることができます。紛争防止のためにも大変重要なツールです。
就業規則を作成する(または変更する)には、「代表従業員の意見書作成」という手続きが定められています。
法律上は、常時従業員を10人以上使用する事業場は、過半数労働組合か従業員の過半数代表者の意見を聴き、就業規則を届出るときは、その意見書を添付すること、となっています。
ところが、この手続きをきちんとされていない企業がよくあるようなのです。
JILPT報告書No.90※によれば事業規模全体で、
①「意見書を作成していない」企業が約16%
②「代表と思われる従業員が作成した」企業が約17%
③「会社側が作成した」という企業が約41%
合わせると7割に達します。
①と③は、常時10人以上の従業員を使用する事業場なら違法状態、②は、従業員の過半数代表者の選出方法に疑義があります。
使用者が従業員代表者を指名してはいけないのです。
このように多くの企業で、本来の手続きを経ずに就業規則が作成・変更されていますが、「従業員の納得を得られているか」という問いについては、なぜか多くの企業が「従業員は納得しているだろうと思っている」、という調査結果が出ています。
しかし、当事務所に訪れる労働者側相談者からは、「意見なんてきかれたことがない」とか「代表を決めるなんてやったことない」という不満の声が聞かれます。「就業規則なんて見たことない」と仰る方も多くいらっしゃいます。
当サイトは、このような手続きを「法定だから」、「義務だから」という理由よりも、従業員の納得を得るために行なって頂きたいと思います。
ですから、従業員10人未満の企業にも当てはまります。
作成・変更した就業規則が現状より従業員に不利益となるものではなく(不利益変更は個別の同意が必要)、合理的内容であるなら、使用者が決定することができます。
「意見を聴く」とは、協議をすることや同意を得ることまでは求められていません。
仮に従業員から反対意見が出ても、使用者の意図を盛り込んだ就業規則は成立します。
ただ、反対意見が出たときは、ぜひ反対の理由を聞いて、今後の労務管理に活用されることをお勧めします。
そのような労使関係構築の積み重ねがあると、経営者の従業員に成果を求める声も届きやすくなるのではないでしょうか。
補足
「常時10人以上」~繁忙期のみ10人以上になる場合は該当しない。企業ではなく事業場単位でみる。
また、「従業員」は正社員だけで10人以上という意味ではなく、パートや契約社員など雇用形態を問わない。
「過半数代表者」~事業場の全従業員が参加しうる投票・選挙等によって選出する。
※労働政策研究報告書No.90「中小企業における労使コミュニケーションと労働条件決定」