労働問題を早期解決するなら労働問題SoftLanding(ソフトランディング)東京・神奈川・埼玉・千葉対応 特定社会保険労務士のあっせん代理

HOME » 個別労働関係紛争の実態 » ハラスメントをあっせんで解決するなら | 労働問題SL@東京・神奈川・埼玉・千葉

ハラスメントをあっせんで解決するなら

今回は、いじめから退職を余儀なくされた労働者Ⅹがあっせんを申請した事案※1を見てみます。 

概要

Ⅹは、学習塾講師の仕事でY社に正社員として働いていました。

ある日、高熱で午前中の会議を欠席すると連絡をしたところ、会議の出席を強要されました。

また数日間の入院が必要になったときには、生徒たちへ授業を休む連絡を、入院中のⅩが自分でするように言われました。

Ⅹは、限界を感じて退職の意思を固めました。円満退職にしたかったので、家庭の都合という理由で退職を申し出たところ、社長から「Ⅹはどこへ行ってもいじめられる」、「俺の言うことを聞いて仕事をしていればいい」、「退職するなら勤務態度を詳細に記載した書類を次の就職先へ送付する」などと言われ、また先輩講師からは、Ⅹの入院のせいでやめた生徒の授業料の支払いを要求されました。

Ⅹは精神的に追い詰められ、自己都合退職と書いた退職願をY社に郵送して退職しました。しかし、実際はいじめが原因で退職せざるを得なかったのだから、実質的な解雇にあたるとして、謝罪と補償金60万円の支払いをY社に求めるあっせんを申請しました。

結果

Y社は、謝罪及び慰謝料の要求には応じないとしたものの、約15万円の解決金をⅩに支払うことで合意しました。

背景

Ⅹは20代女性です。若い世代のハラスメント被害は、深刻な事案が目立ちます。

「何を言われても従わなければならないと指示される」、「売上金を盗んだとの疑いをかけられる」、「遅刻等を理由に殴られる」、「自宅に帰ることを許されない」※2など、就労経験の浅い労働者(特に新入社員等)は、我慢をしているうちにハラスメント行為がエスカレートします。

早い段階での専門家への相談が自分の身を守ることになります。

もしメンタル疾患などに罹患してしまうと、長期療養を要する事態となりかねません。

紛争解決手段の一つ“あっせん”

“あっせん”は、第三者(事例では労働局)が当事者間に互譲を促し和解成立を目指す制度です。

いわゆる「白黒決着型」の「勝ち負け」などと表現される結果をもたらす手続きではありません。

「勝ち負け」が決まってしまうと、その後の当事者間は決別することになりがちです。

そのため、“あっせん”は、当事者間に無用な禍根を残さずに、紛争を解決したいときに適しています。

労働者個人からの申請が9割(※3)を占める“あっせん”は、一般的に、労働者が最初に相談に行く無料の「労働相談コーナー」において、解決手段の一つとして“あっせん”が紹介されます。

そのとき、恐らく相談員から「手続きが簡易で専門家の手が無くても自分で申請できる」といった説明を受け、“あっせん”を選択することが多い(※4)ようです。

しかし、「手続きの簡易性」がメリットばかりでないことは、十分に伝わっていないのではないでしょうか。

デメリットとして、裁判所の手続きに比べ解決金の低額化傾向※5もその1つです。

上記事例の<結果>の解決金額にもその傾向が現れています。

“あっせん”は証拠調べをしないので、申請人(労働者側)が自分で証拠を集めたり、自分の請求内容を裏付ける資料を作成しなくても申請できるメリットがあります。

しかしそれは、“あっせん”が、どのくらいの金額で和解できるかを優先する手続きであって、裁定が下されることがないため和解合意の到達点が低額化することになります。

ですから、専門家が“あっせん”申請の代理人となる場合は、提出義務がなくても、証拠や裏づけ資料を添付します。

そのようにして主張の正当性を担保しなければ、“あっせん”で満足いく結果を得ることが難しくなります。

さらに、労働者が本人申請で申し立てを行なう場合、ご自身で気付いていない権利利益の問題があります。

専門家であれば必ず請求したであろう利益を取りこぼしているかもしれないのです。

そのまま和解した場合、清算条項によって、ご本人が気付かないまま債権放棄させられてしまうリスクがあります。和解終結をした後で「そんなの請求できたの?」と気づいても遅いのです。

清算条項について

和解が成立したときに締結する「和解合意書」等には、ほぼ必ず「清算条項」という「当事者間にこの他の債権債務は存在しません」という確認の1文があります。
 
もともと、労働者と使用者では資力や交渉力に差があります。

手続きの簡易性という後押しを受けて、労働者ご自身で“あっせん”を申請する場合でも、相手方使用者は専門家に依頼していることが多く、対等な交渉が実現しているかどうか疑問です。

“あっせん”のメリットを享受しながら可能な限りの利害調整を図るには、やはり労働者申請人に特定社会保険労務士等の代理人が必要です。お問い合わせ下さい。

従業員側から見たコメント

上記事例のような上司の言うことには、思いつめることなく、一歩離れて、専門家にご相談下さい。

言動は可能な限り録音します。録音が難しいときは、日時・場所・言動等の5W1Hをメモします。その場に居合わせた他の人の氏名も記録して下さい。

なお、“やめた生徒の授業料”などは、Ⅹが負担するべきものではありません。

事業活動の上で生じた損害は事業主責任です。

従業員が損害賠償責任を負うとすれば、従業員に故意または過失があったときですが、そのような場合でも全額負担することはなかなかありません。

会社側から見たコメント

“あっせん”は参加・不参加の自由が被申請人に認められていますが、もし“あっせん”の申立てを受けたなら、応じて早期解決されることをお勧めします。

会社側にとって“あっせん”は、一般的に裁判手続きに比べ損失を抑えることができます。

また、第三者が介入することで、当事者間では聞き出せなかったトラブルの本質を認識することができます。

“あっせん”によって事業への影響を最小限に留めた上での紛争解決を図り、その経験を今後の労務管理に取り入れるほうが、“あっせん”を拒否して労働審判等へ発展させるより建設的ではないでしょうか。

人材不足、採用難の時代に継続的に事業発展するには、トラブルで離職者を出さない、という視点の取組みが有効です。

※1:JILPT資料シリーズ№154「職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメントの実態」p207
※2:    〃    p13 
※3:厚生労働省Press Release「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」p14
※4:JILPT資料シリーズ№154「職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメントの実態」p46
※5:JILPT労働政策研究報告書№174「労働局あっせん、労働審判及び裁判上の和解における雇用紛争事案の比較分析」p44

お問い合わせはこちら

特定社会保険労務士・行政書士 濱本事務所
代表 濱本志帆
東京都世田谷区玉川4-12-16-H610-201号室
tel:03-6356-7299 fax:03-6315-9599
Email:info@adr-sr.com
お電話受付時間 平日10時から19時

powered by 行政書士アシストWEB / 行政書士向けビジネスブログHP作成 / smartweblab